資金計画
小さな宿・店の資金計画の立て方 3枚の表で組む手順
資金計画は、はじめに使うお金、集めるお金、続けるお金の3枚の表に分けると、迷わず形になります。小さな宿やお店でそのまま使える組み立て方をまとめました。
小さな宿やお店の資金計画は、「使うお金」「集めるお金」「続けるお金」の3枚の表に分けて作ると、最短で形になります。大きな一枚の表に全部を詰め込むより、役割ごとに分けたほうが、数字の抜けに気づきやすく、相談する相手にも伝わりやすくなります。この記事では、その3枚の作り方を順番に紹介します。
3枚に分ける理由
「開業までの費用」と「開業してからの毎月の費用」は、性格の違うお金です。表を分けると、足りないのが最初の資金なのか、続けるための資金なのかがはっきり見えます。そこで、時間の流れに沿って次の3枚に分けます。
| 表 | 中身 | 見る時期 |
|---|---|---|
| 1枚目 使うお金 | 改装・設備・備品・許認可・広告など、最初にかかる一度きりの費用 | 開業前 |
| 2枚目 集めるお金 | 自己資金・借入・補助金・クラウドファンディングなど、お金の入り口と入る時期 | 開業前から開業直後 |
| 3枚目 続けるお金 | 家賃・光熱費・仕入れ・人件費・返済など、毎月出ていく費用と、入ってくる売上 | 開業後 |
1枚目と2枚目は「開業の日までに足りるか」を見る表、3枚目は「開業してから続くか」を見る表です。目的が違う表だと割り切ることが、迷わないコツです。
1枚目 使うお金を書き出す
まずは、思いつくものを分類しながら全部書きます。金額が分からない項目は空欄のままで構いません。「見積りを取るもの」として印をつけておくと、次の作業が見えてきます。
- 場所に関わるもの:改装・修繕、内装、看板、水まわりや電気の工事
- 設備と備品:厨房機器、家具、寝具、食器、パソコンやレジ
- 手続きに関わるもの:許可や届出にかかる費用、専門家への相談費用
- 知らせるもの:ホームページ、写真の撮影、チラシ、予約の仕組み
- 予備:想定外の追加工事や、開業日が少し延びたときの費用
見積りを依頼するときは、次の3点を添えると、あとで比べやすくなります。
- 工事や購入の範囲:どこからどこまでを含むのか
- 時期:いつまでに終えたいのか、支払いはいつか
- 内訳:材料費と作業費が分かれているか
同じ内容で2社以上から取ると、金額だけでなく範囲の違いも見えてきます。見積書は、補助金の申請や金融機関への相談でも使えるので、日付のついた書類として大切に保管してください。
古い建物を直す場合は、壁や床を開けてみて初めて分かる修繕が出やすいため、予備の枠を最初から表の中に作っておくと安心です。
2枚目 集めるお金と入る時期を並べる
お金の集め方には種類があり、それぞれ性格が違います。金額の大きさだけでなく、「いつ入るか」を必ず横に書いてください。
| 集め方 | 特徴 | 表に書くこと |
|---|---|---|
| 自己資金 | 手元にあり、すぐ使える | 使ってよい上限と、生活費として残す分 |
| 借入 | まとまった金額を準備しやすいが、返済が続く | 借りる先の候補・返済の始まる時期 |
| 補助金 | 返済は不要。多くは事業を終えてから支払われる形が一般的 | 公募の期間・対象経費・入金の見込み時期 |
| クラウドファンディング | 応援とともに集まる。リターンの準備が必要 | 募集期間・リターンの費用・入金の時期 |
とくに補助金は、先に支払ってから後で戻る形が多いため、「使う日」と「入る日」のずれをつなぐお金が別に必要になります。このずれを表の上で見えるようにしておくと、直前に慌てずにすみます。補助金の公募は時期が決まっているので、公募要領の日程を先に確認してから、計画の日程を逆算するのがおすすめです。
3枚目 続けるお金を月ごとに見る
3枚目は、開業後の毎月を縦に並べた表です。上段に「入るお金」、下段に「出るお金」を書き、いちばん下に月末の残りを置きます。
- 入るお金:宿なら客室の稼働と宿泊単価、お店なら客数と客単価から、控えめな見込みで出す
- 出るお金:家賃・光熱費・仕入れ・人件費・通信費・返済・各種の支払いを項目ごとに書く
- 月末の残り:入るお金から出るお金を引き、前の月の残りに足していく
小さな宿や店では、開業して最初の数か月は売上が少しずつ育っていく時期です。そこで「見込みどおり」「控えめ」の2通りを作っておくと、控えめな場合でも続けられるかを確認できます。
3枚目の見本の形と、数字の置き方
3枚目は、次のような形で作ると、足し算と引き算だけで進められます。数字は自分の見込みを入れてください。
| 行 | 1か月目 | 2か月目 | 3か月目 |
|---|---|---|---|
| 前の月からの残り | 開業時の手元資金 | 1か月目の月末の残り | 2か月目の月末の残り |
| 入るお金(売上など) | 客数×単価の見込み | 同左 | 同左 |
| 出るお金(固定費) | 家賃・光熱費・通信費など | 同左 | 同左 |
| 出るお金(変動費) | 仕入れ・消耗品など | 売上に合わせて増減 | 売上に合わせて増減 |
| 返済 | 返済が始まる月から記入 | 同左 | 同左 |
| 月末の残り | 上の合計 | 同左 | 同左 |
数字を入れるときの考え方は3つです。固定費は売上に関係なく毎月出るため、最初に確定させます。変動費は売上に比例して動くため、売上の見込みを変えたら一緒に変えます。返済は、借りたあとのいつから始まるかを必ず確認して、始まる月から入れます。月末の残りが一度でもゼロに近づく月があれば、その月に向けて、入金を早める、支出の時期をずらす、つなぎの資金を用意する、のどれかを検討します。
また、表を作る人が一人で抱え込まないことも大切です。経営する本人は数字を甘く見積もりやすく、家族や手伝ってくれる人は費用を見落としやすいものです。2人で別々に費用の項目を書き出して見比べると、抜けがはっきり分かります。
作る順番とつまずきの直し方
3枚は、次の順番で作ると手戻りが少なくなります。
- 3枚目の「続けるお金」で、毎月の出費の大きさをつかむ
- 1枚目の「使うお金」を書き出し、見積りが必要なものに印をつける
- 2枚目の「集めるお金」で、足りない分をどこから集めるかを決める
- 日付を入れて、お金が足りなくなる月がないかを見る
| つまずき | 直し方 |
|---|---|
| 項目が抜けていて、あとから追加が出る | 予備の枠を作り、見積りの取れていない項目に印をつけておく |
| 入金が遅れて資金が一時的に足りなくなる | 補助金やクラウドファンディングの入金時期を表に書き、つなぎの資金を別に見込む |
| 売上の見込みが明るすぎる | 控えめな見込みも作り、そちらでも続けられるかを見る |
| 数字だけで場所や権利のことを考えていない | 設備や場所、音楽の権利などの資産も、書き出して棚卸しする |
3枚が揃ったら、相談の材料になる
3枚の表が揃うと、金融機関や専門家に話すときの材料がそのままできあがります。数字が完璧でなくても、「ここまでは決まっていて、ここから先を相談したい」と伝えられる状態になれば、相談は一気に進みます。税理士や弁護士などの専門家には、表をそのまま持ち込んでご相談いただくと安心です。
12FUNDは、熱海・伊豆山の小さな宿、店、地域の事業者の方からの、資金や補助金のご相談を受けています。公募情報の整理、事業計画の材料づくり、設備や音楽の権利などの棚卸し、専門家への橋渡しまで、できあがりかけの3枚の表を一緒に見る形でも相談できます。最初のお問い合わせでは、機密の財務資料は送らず、状況のあらましをお書きください。
よくある質問
資金計画の表は、金額が決まっていなくても作れますか?
作れます。金額が分からない項目は空欄にして「見積りを取るもの」と印をつけておくと、次に何をすればよいかが見えてきます。
補助金は資金計画のどこに入れればよいですか?
2枚目の「集めるお金」に、公募の期間・対象経費・入金の見込み時期とあわせて書きます。入るのが事業のあとになる場合は、そのあいだをつなぐお金も別に見込みます。
表は誰に見せればよいですか?
金融機関や税理士などの専門家に見せると、足りない項目に気づけます。12FUNDでは、表の見直しの相談も受けています。
記事の公開日:2026年11月5日。運営:株式会社エートゥーナンバーレコード(〒413-0002 静岡県熱海市伊豆山573-2)。